不動産クラウドファンディングとは?仕組みと始め方、知っておきたいリスク
不動産クラウドファンディングは、インターネットで複数の投資家からお金を集め、事業者が不動産を運用して、家賃収入や売却益を分配する仕組みです。1万円程度から出資できる案件が多い一方、運用期間中は原則として引き出せず、元本保証もありません。契約の型、始め方、リスクを順番に整理します。
不動産クラウドファンディングとは:お金の流れ
不動産クラウドファンディングは、「不動産特定共同事業法」という法律にもとづく商品です。事業者がインターネット上で案件(ファンド)を紹介し、投資家は申し込みから契約までをオンラインで行います。物件の管理や入居者探しは事業者が行うため、投資家が自分で物件を管理する必要はありません。
- 事業者が案件を募集物件の内容、運用期間、想定利回りなどを公開する
- 投資家が出資1口いくら、という単位で申し込んで入金する
- 事業者が不動産を運用家賃収入を得たり、物件を売却したりする
- 利益を分配経費や事業者の報酬を差し引いた残りを、出資額に応じて分配
- 運用期間が終わると償還出資したお金が戻る(損失が出た場合は減ることがある)
この事業を行うには、国の許可などが必要です。国土交通省の説明では、許可を出すのは事業の範囲によって次のように分かれています。
| 事業の範囲 | 許可などを出すところ |
|---|---|
| 2つ以上の都道府県に事務所を置く、など | 国土交通大臣と金融庁長官 |
| 1つの都道府県の中だけで行う | 都道府県知事 |
| 小規模(投資家1人あたり原則100万円まで、出資の総額1億円まで) | 登録制(小規模不動産特定共同事業) |
REITや不動産のデジタル証券など、ほかの少額の不動産投資とのちがいは、少額で始める不動産投資、4つの方法のちがいで比べています。
匿名組合型と任意組合型のちがい
不動産特定共同事業の契約には、主に「匿名組合型」と「任意組合型」があります(ほかに「賃貸委任契約型」もあります)。インターネットで少額から募集される案件の多くは、匿名組合型です。
- 物件の持ち主は事業者
- 投資家はお金を出し、利益の分配を受ける
- 1口1万円程度からの案件が多い
- 損失は出資した金額まで
- 投資家も出資の割合に応じて物件を持つ
- 登記の費用や手続きが必要になることがある
- 1口10万円以上など、まとまった金額の案件が多い
- 出資した金額を超える負担を負う可能性がある
| 比べるところ | 匿名組合型 | 任意組合型 |
|---|---|---|
| 不動産の持ち主 | 事業者 | 投資家(組合員)も共有で持つ |
| 登記 | 投資家の名前は載らない | 必要になることがある |
| 損失を負う範囲 | 出資した金額まで | 出資した金額を超えることがある |
| 最低金額の目安 | 1口1万円程度からが多い | 1口10万円以上が多い |
分配金にかかる税金の扱いも、型によってちがいます。匿名組合型の税金については4つの方法のちがいの「税金とリスクのちがい」も参考にしてください。
ポイント 匿名組合型の多くの案件では、事業者も一緒に出資し、損失が出たときは事業者の分から先に負担する「優先劣後出資」という仕組みがとられています。ただし、損失がその分を超えれば投資家の元本も減ります。
始め方:申し込みから償還までの流れ
多くのサービスでは、手続きがインターネットで完結します。一般的な流れは次のとおりです。
- 会員登録事業者のサイトでメールアドレスなどを登録
- 本人確認・投資家登録本人確認書類を提出し、事業者の審査を受ける
- 案件を選ぶ物件、運用期間、想定利回り、劣後出資の割合などを確認
- 書面を読んで申し込む契約前に交付される書面で、仕組みとリスクを確認
- 入金・契約成立決められた期日までに出資金を払い込む
- 運用・分配・償還期間中に分配を受け、期間が終わると出資金が戻る
人気の案件はすぐに募集が終わることがあり、先着順など、募集の方法は案件ごとに決まっています。
法律では、投資家を守るために、事業者に書面の交付が義務づけられています。
- 運営する事業者の名前と、許可・登録の内容
- 投資する物件の場所・種類と、運用の方法
- 運用期間と、途中で解約できるかどうか
- 劣後出資の割合と、損失が出たときの扱い
- 想定利回りの前提(満室を前提にしているか、など)
- 手数料や、分配・償還の時期
知っておきたい主なリスク
不動産クラウドファンディングは、運用中は分配が安定して見えるため、リスクが小さいと思われがちです。しかし多くの解説で共通して、次のリスクが挙げられています。
| リスク | どんなことが起きるか |
|---|---|
| 元本割れ | 空室が増える、物件が想定より安くしか売れない、などで損失が出て、出資金が減る |
| 途中で引き出せない | 運用期間中は原則として解約できない。例外的に認める場合も手数料がかかることが多い |
| 事業者の倒産 | 事業者の経営が悪化すると、分配や償還が止まったり、出資金が戻らなかったりすることがある |
| 償還の延期・遅れ | 物件の売却が予定どおり進まず、運用期間が延びたり、分配や償還が遅れたりすることがある |
| 想定利回りどおりにならない | 想定利回りは見込みの数字で、実際の分配が下回ることもある |
ポイント 事業者が倒産したときに出資金がどう扱われるかは、案件の形によってちがいます。物件だけでなく、運営する事業者の財務状況や過去の運用実績も確認しておくと安心です。
メリットと注意点を並べると、次のようになります。
- 1万円程度から、不動産に投資できる案件が多い
- 物件の管理や入居者探しは事業者が行う
- 運用期間が決まっていて、いつお金が戻る予定かがわかる
- 劣後出資があれば、一定の範囲までの損失は事業者が先に負担する
- 元本保証はなく、元本割れすることがある
- 運用期間中は原則として引き出せない
- 事業者の経営状態によって、分配や償還が止まることがある
- 想定利回りが高い案件ほど、リスクも高いことが多い
よくある質問
不動産クラウドファンディングは誰でも運営できる?
できません。不動産特定共同事業法にもとづき、国土交通大臣・金融庁長官や都道府県知事の許可、または登録などを受けた事業者だけが行えます。申し込む前に、事業者の許可・登録の内容を確認しましょう。
申し込んだあとに、やめることはできる?
契約が成立したときに受け取る書面を受け取った日から数えて8日を過ぎるまでは、書面で契約を解除できます(不動産特定共同事業法第26条)。この期間を過ぎて運用が始まると、原則として途中で解約できません。
いつでも売れる不動産投資はある?
上場しているREITは、取引時間中に市場で売買できます。証券会社の口座で買えて、NISAの成長投資枠の対象にもなります。くわしくは10分でわかるREITを、証券会社の比べ方は証券会社マッチングを参考にしてください。
まとめ
- 不動産クラウドファンディングは、不動産特定共同事業法にもとづく商品で、許可などを受けた事業者が運営する
- 少額の案件の多くは匿名組合型。物件の持ち主は事業者で、損失は出資額まで
- 手続きはオンラインで完結することが多い。契約前の書面で仕組みとリスクを確認する
- 元本保証はなく、運用期間中は原則引き出せない。事業者の倒産や償還の延期にも注意する
ほかの少額の不動産投資とのちがいは少額で始める不動産投資、4つの方法のちがいで、投資信託の基本は10分でわかる投資信託で解説しています。
(主な参考:国土交通省(不動産特定共同事業の許可)、不動産特定共同事業法(e-Gov法令検索)ほか)